最近、キリン・ザ・ゴールドとエビス・ザ・ホップという気合の入っていそうな新製品が相次いで出たが、結論から言うとどっちもまあ方向としてはOKである。1年前、僕は「キリンはハートランドを缶で出すべし、エビスはもっとホップを効かすべし、」と書いたのだった。
ハートランドはきれいな緑色の瓶に入ったオールモルトビールだが、一部の酒屋にしか置いていない。キリンはいわゆるプレミアムビールとしてブラウマイスターというのも出しているが、こいつはドイツ語の名前を名乗っているくせに米か何かを使っているのである。キリンはラガーにしても一番搾りにしても、なぜか米とかスターチを使うのが好きで、麦芽のコクがあまり無い。ハートランドは旨いんだから、あれを缶で出せばいいじゃないか、というのが僕の意見であった。
エビスはホップの使い方に問題がある。以前、1年半ほど自分の作ったビールだけを飲み続けた経験のあるワタクシにご説明させていただくなら、ビールに使うホップには、苦味担当のビターホップと、香り担当のアロマホップがあります。エビスはホップが効いていることは効いているのだが、苦いばっかりで香りが無い。アロマホップをケチってるんじゃないの?と思ってしまうわけである。
キリン・ザ・ゴールドはちゃんとオールモルトだし、エビスはちゃんとアロマホップを効かせてきた。これはサントリー・プレミアム・モルツのヒットによって、業界の目が覚めたということだろう。ビールというのはモルトのコクとビターホップの苦味とアロマホップの香りのバランスによって成り立っている、という基本を日本のビール業界も思い出したのだ。
この前、キリンが復刻ラガーというのを出していた。明治ラガーと大正ラガーがあって、原材料を見たら、明治は麦芽とホップだけ、大正はそこに米が加わっている。今のラガーは更にスターチが加わるわけで、つまり時代とともに混ぜ物が増えてきたのである。これは「薄い味の方がたくさん飲むだろう」という販売戦略と、「モルトより米やスターチの方が原料代が安くなる」という経済原理によるものではないかと僕は疑っている。
ところで、僕は1年前に「アサヒは当分スーパードライでいくしかないからしんどいだろうな」とも書いたが、キリン・ザ・ゴールドが売れたらますますしんどくなる。アサヒはプレミアム・モルツに対抗してプライムタイムというのを出したが、プレミアムモルツやエビスと違ってコクはあまり無い。その代わり香りが良いのだが、ホップの香りではなく大吟醸酒のようなエステル香である。これはこれでうまいビールであることは間違いないが、苦戦しているようで、スーパーの棚に置いてある量も少ないしプレミアム・モルツより大分安く売られている。スーパードライをオールモルト化するのは”KARAKUCHI"じゃなくなってしまうから無理だし、いつスーパードライを見切ってオールモルトの新製品を出すのかが問題だ。キリンやサントリーがモルトビールでシェアを固めた後で出したら結構苦しいだろう。どうする、アサヒ?
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