「憂鬱と官能を教えた学校 バークリー・メソッドによって俯瞰される20世紀商業音楽史(上・下)」(河出文庫) 菊池成孔+大谷能生
2012-02-25


バークリー音楽院はポピュラー音楽の総本山みたいなところで、バークリー・メソッドというのは、ポピュラー音楽のコード進行とメロディーの関係を分析する和声理論である。僕が21世紀になってからフォローするようになった現役ミュージシャンはエスペランサ・スポルディングとコトリンゴなのだが、彼女たちは二人ともバークリー音楽院出身だ。

この本は現在の音楽産業界に流布しているバークリー・メソッドを中心に商業音楽の歴史について語る講義録。バークリー・メソッドの中身の説明をしながら、バッハの平均律クラヴィーアからMIDIに至るまで、商業音楽の歴史について縦横に語っていて、非常に面白かった。

最初の方の長音階、短音階とかトニック、ドミナントとかの話は中学校の時に音楽の授業で楽典をやったときにも習ったクラシックの理論だが、スケールが出てきてだんだんジャズになる。モード技法まで行ってマイルズ・デイヴィスのKind Of Blueの解説があるので聴き直してみると、ナルホドそういうことだったのかとよく判る。

後半はバークリーから少し離れてリズムの話が多いが、これも面白い。他にも僕がポピュラー音楽について断片的に考えていた諸々の事柄について、いろいろ教えられることがあった。

著者は単に無批判にバークリー・メソッドを紹介しているだけではなく、バークリー・メソッドを学んだミュージシャンがコードをどんどん複雑にしたくなることを「バークリー病」と呼んだり、商業音楽を作るためのバークリー・メソッドという教育法はそろそろ役割を終えたんじゃないかとも言っている。

この本に影響を受けて、拙著「ポピュラー音楽の聴き方」が生まれました。

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