「運動のみならず思考過程においても小脳が重要な役割を果たす」という説を小脳仮説というらしい。
小脳論[LINK]をお読みいただいているみなさまはご承知のとおり、これは僕が10年前から言っていることである。その小脳仮説を
理化学研究所と富士通が共同で検証するそうだ。プロ棋士が将棋を指している時の小脳の活動を測定するのだという(
理研のプレスリリース)。面白そうだ。
小脳が運動だけでなく(無意識的な)思考に関わるという説は小脳研究の権威である伊藤正男先生のオリジナルである。僕が10年前に「小脳論」と称する文章を書いた時にも伊藤正男著「脳と心を考える」を参考文献に挙げている。でも、僕は伊藤先生とは独立にその仮説に辿りついていたのである。そのことは一応はっきりさせておきたい。
僕は20年間くらい前から無意識的思考の重要性について考えていた。そのうちに「運動技能の記憶は小脳に蓄えられる」という研究が報道されるようになった。そこで僕は以下のように考えた。
1、運動ができるようになるのは「無意識にできるようになる」ということなのだから、小脳の記憶は無意識的な記憶であるといえるだろう。
2、運動だけではなく思考についても技能的な要素はあり、思考が身に付いて無意識的思考となることもある。
3、だとすれば無意識的思考が蓄えられるのも小脳なのではないか。
そういうわけで、思考と行動は小脳において無意識的に通底しているというのが小脳論の前提である。小脳論はそこから先の話をしているわけだから、実証研究がもっとどんどん進んでくれたら嬉しい。そうなれば僕の考えもどんどん脳科学的に裏付けられていく…かもしれない。
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